AIに「バナーを作って」と頼むと、数十秒で何パターンも返ってきます。私も実務でよく使います。
たたき台を出すスピードは、もう人が手で並べるのとは比べものになりません。
でも、ここで手が止まることはないでしょうか。
「どれもそれっぽいけど、どれがいいのか分からない」。
10枚並べられて、なんとなく良さそうな1枚を選ぶ。
けれど、なぜそれが良いのか、本当にこれでいいのかと聞かれると、はっきり答えられない。
生成は一瞬でも、選ぶ・直すの段階で詰まる。これはAIを使い始めたデザイナーの多くがぶつかる壁だと思います。
そして実は、この「選ぶ・直す」こそが、これからのデザイナーの仕事の本体になっていきます。
なぜ「AIのデザインを判断する力」がこれから効くのか
AIが大量にデザインを生成できるようになるほど、それを判断する力の価値が上がります。
理由はシンプルで、生成は誰でもできるようになるからです。
プロンプトを書けば、初心者でもプロっぽいビジュアルが手に入る(デザイナーとしては悲しいですが)。
そうなると差がつくのは、「出てきたものの中から良いものを選び、足りないところを直す」工程です。
作業はAIがやり、品質チェックと最終判断は人がやる。
その判断をロジカルにできる人が、デザイナーとして残っていくと私は考えています。
| 役割 | 得意なこと |
|---|---|
| AI | 量を出す/バリエーション/それっぽい仕上げ |
| 人 | 目的との整合/全体バランスの判断/修正の方向づけ |
AIが作ったデザインで起きがちな“違和感”の正体
AIの出力は、パッと見は整っています。
でも、よく見ると次のような崩れが潜んでいることが多いです。
- 全体のバランス(重心)が崩れている:要素単体は綺麗でも、画面全体で見ると重さが片側に寄っている
- 情報の優先順位が曖昧:何を一番伝えたいのかが、視覚的に整理されていない
- 文字とビジュアルの関係が甘い:可読性が低い、視線が迷子になる
- 意味のない装飾:なんとなく豪華だが、目的に効いていない飾り
- 文脈とのズレ:AIはそのブランドや商品の事情を知らないので、トンマナが目的とずれる
これらは、AIが「局所的には上手いが、大域(全体)と文脈は苦手」だから起こります。
だからこそ、人の目でそこを補う必要があります。
人がチェックすべき4つの視点
AIが出してきたデザインを前にしたとき、私は次の順でチェックしています。
1. 最初に視線がどこへ行くか
良いデザインは、一番見てほしいものに最初に視線が行きます。
AIの出力は、意図と無関係に派手な部分へ視線が引っ張られていることが多いです。
「自分の目が最初にどこへ行くか」を意識して見ます。
2. 情報の優先順位と一致しているか
伝えたい順番(主役→脇役)と、見た目の目立ち順が一致しているかを確認します。
ズレていたら、サイズ・色・配置で序列を作り直します。
3. 余白とまとまり
「要素が詰まりすぎ・散らかりすぎていないか」
「グループであるべきものが、ちゃんと近くにまとまっているか」
AIは余白の設計が雑になりがちです。
4. 目的・ブランドとの整合
これはAIには絶対にできない、人にしかできない判断です。
「この商品の客層に合っているか」「この媒体で機能するか」など、文脈を知っているのは人だけです。
“重心”は、AIチェックの最初の関門
この4つの中で、最初の「視線がどこへ行くか」は、言い換えると視覚的重心が意図どおりの場所にあるかということです。
ただ厄介なのは、自分の目だけで見ていると「なんかいい感じ」という印象に流されてしまうことです。
とくにAIの出力はクオリティが高く見えるので、冷静に重心を判断するのは難しくなってしまうのです。
そこで、AIが出してきた画像をそのまま重心チェッカーに入れて、客観的に確かめるのがおすすめです。
視覚的な重心がどこにあるかを、ヒートマップとスコアで可視化します。
会員登録不要・無料で、画像はサーバーに送られないので安心して使用してください。
「自分はこの辺が主役のつもりだったのに、重心は逆側にあった」と数値で分かると、どこを直せばいいかがはっきりします。
重心がズレていたときの具体的な直し方は、別の記事にまとめています。
チェックして終わりではなく「直せる」人になる
AI時代に価値が出るのは、「良し悪しを判断できる」だけでなく、「どう直せばいいかを指示できる」人です。
「なんか微妙」で止まる人と、「重心が右に寄っているから、左下に要素を足して」と言える人が存在してきます。
後者はAIに的確な修正指示を出せるし、自分で手を入れることもできます。
判断と修正がセットになって、はじめてAIを使いこなす状態になれます。
まとめ
AIはデザインの生成を一瞬で終わらせてくれます。
でも、その中から良いものを選び、目的に合うように直す工程は、これからも人の仕事です。
判断するときは、(1)視線の行き先、(2)情報の優先順位、(3)余白とまとまり、(4)目的との整合、の4つを意識してください。
とくに最初の「視線=視覚的重心」は、客観的に可視化すると一気に判断しやすくなります。
「作業はAI、判断は人」を、感覚ではなくロジックでやれるようになる。その物差しの作り方や、私が重心チェッカーをどういう思想で設計したのかは、解説noteにまとめています。
AI時代のデザイナーとしての判断力を上げたい方は、こちらもどうぞ。
